相続の場面では、「相続人の一人が長年音信不通」「住所がわからず連絡が取れない」といったケースが意外と多くあります。
そんなとき、相続手続きを進めるにはどうしたらいいのでしょうか?
この記事では、行方不明の相続人がいる場合の手続き方法と注意点について、家庭裁判所の制度を交えながら解説します。
そもそも相続人が行方不明だと何が問題?
相続では、すべての相続人による遺産分割協議が原則です。
つまり、1人でも欠けると協議自体が無効となり、不動産の名義変更や預金の解約もできません。
【協議ができない主なケース】
•長年連絡が取れない親族が相続人にいる
•海外移住・消息不明で所在が不明
•縁遠くなっていて連絡先がわからない
このような状況でも、手続きを進めるための方法があります。
家庭裁判所に申し立てて「不在者財産管理人」を選任
行方不明の相続人がいる場合には、家庭裁判所に申し立てて「不在者財産管理人」を選任することができます。
📌不在者財産管理人とは?
不在者(行方不明者)の財産を管理するために、家庭裁判所が選ぶ代理人のことです。
選任後は、その代理人が代わって遺産分割協議に参加できます。
不在者財産管理人選任の流れ
1. 家庭裁判所への申立て
•管轄:不在者の「最後の住所地」または「被相続人の住所地」
2.選任審理と選任決定
•事情が確認され、不在者財産管理人が選ばれる
•多くの場合、申立人(親族など)が管理人になります
3.遺産分割協議に代理参加
•管理人が家庭裁判所の許可を得て、協議に参加
• 合意が成立すれば、不動産の相続登記や預金の解約が可能に
⚠️注意点:管理人は勝手に協議できない?
管理人はあくまで「不在者の利益」を守る立場です。
そのため、遺産分割協議に同意する際は、別途「家庭裁判所の許可」が必要になります。
⚠️協議内容が不在者にとって不利であると、許可が下りない可能性も。
このため、遺産の分割方法については、公正で不在者に不利益のない内容にする必要があります。
不在者相続以外の対処法はある?
状況によっては、以下のような対応方法もあります。
🟦 相続放棄の確認
実はすでに他の相続人が相続放棄をしている場合、行方不明者が相続人ではない可能性もあります。戸籍の調査が重要です。
🟦 裁判所を使わない方法
相続財産が少額であれば、「法定相続分での相続登記」なども可能な場合があります(協議不要のケース)。ただし注意が必要です。
まとめ:不在者がいても、手続きを諦めないで
相続人の所在不明は、感情的にも手続き的にも難しい問題です。
ですが、「不在者財産管理人」の制度を使えば、手続きを前に進めることが可能です。
不在者の存在が原因で手続きが止まってしまっている方は、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。
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