相続登記義務化へのポイント

今回の相続登記に関する法改正の大きなポイントは、以下の3つです。

  1. 相続登記の申請義務化(3年以内の施行)
  2. 相続人申告登記の(仮称)の創設(3年以内の施行)
  3. 所有権の登記名義人の氏名または名称、住所の変更の登記の義務づけ(5年以内の施行)

相続登記と所有権の登記名義人の変更について、正当な理由がなく申請しなかった場合には、それぞれ過料を支払わないといけません。

所有者不明土地が北海道本島の広さに?

日本全国の所有者不明土地は、このままだと北海道本島の土地面積(約780万ヘクタール)に匹敵する720万ヘクタールに匹敵する―。

これは、一般財団法人「国土計画協会」の所有者不明土地問題研究会による試算結果です。この数字から、所有者不明土地問題の深刻さが伝わってきます。相続登記が義務化された背景には、この「所有者不明土地」の増加があります。所有者不明土地とは、所有者が分かっても転居してしまって連絡先が分からないもの、土地の名義人が亡くなった後、登記されないままで相続人が多くなり、全ての人に連絡するのが困難になったものなどを指します。こういった場合、親から相続した実家を売却したり、利活用したりしようとしても、多くの人に連絡をとらないといけません。その手続きだけで多くの時間がかかり、すぐに売ることはできない、といったデメリットが生じるのです。国土交通省が、毎年まとめている「土地白書」の平成30年版によると、登記簿に記されている土地のうち、「所有者不明土地」は約20.1%に上りました。2016年時点では、九州本島の面積(約367万ヘクタール)を上回り、約410万ヘクタールに達しました。

未登記の土地のデメリット

未登記の土地が増えた場合、デメリットはさまざまに広がります。

  1. 公共事業や再開発を進めようとしても、所有者を探す時間や費用はもちろん、手続きにコストもかかります。
  2. また、災害が起きた際、復興に向けた用地取得も難しくなります。生活面では、時に相続人が数百人に及ぶこともあります。そうすると、土地を活用しようとしても、全員に連絡して了解をもらわないといけません。

こういったことを踏まえ、同研究会は、2040年までの経済的損失は、少なくとも約6兆円と試算しました。算出できないファクターもあるため、実際の損失額はさらに大きくなる可能性もあります。

この問題に解決の道筋をつけるため、国は相続登記の義務化を模索。そして、2021年2月、法整備を検討してきた法制審議会が、相続や住所を変更した際の登記を義務づける法改正を法務相に答申し、4月21日の国会で成立しました。