認知症になる前にしておくべき3つのこと – 任意後見契約・財産管理委任契約・遺言書の作成-
将来の安心のために、今からできる法的準備を司法書士が解説

高齢化社会で増える「認知症によるトラブル」
日本では、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。
認知症になると、銀行での手続きや契約、不動産の売却など、日常生活の中でも「本人の意思確認」が必要な場面で支障が出ます。
実際に次のようなケースは年々増加しています。
- 銀行口座が凍結されて生活費を引き出せなくなった
- 不動産の売却や名義変更ができない
- 家族が代わりに手続きしてトラブルになった
- 本人の判断力が低下し、遺言書が無効になった
こうした事態を防ぐには、判断能力がしっかりしている「今」から備えることが重要です。
そこで今回は、司法書士の立場から「認知症になる前にやっておきたい3つの法的準備」を詳しく紹介します。
① 任意後見契約 ― 将来の財産管理を安心して託すために
任意後見契約とは?

将来、判断能力が低下したときのために、信頼できる人(任意後見人)をあらかじめ指定しておく契約です。
公正証書で作成し、本人の判断能力が低下した時点で家庭裁判所の監督下で効力が発生します。
メリット
- 自分で後見人を選べる(家庭裁判所任命より安心)
- 任せる範囲を自由に設定できる(財産管理・生活支援など)
- 法定後見制度より柔軟に設計可能
注意点
- 公証役場での手続きが必要
- 実際に発効するのは「判断能力が低下したあと」
💡 ポイント:
判断能力が低下してからでは契約そのものができません。
「元気なうちに任意後見契約を作っておく」ことが、将来の安心につながります。
② 財産管理委任契約 ― 「今」からサポートを受けたい人に
財産管理委任契約とは?

判断能力がまだ十分あるうちに、信頼できる人に銀行手続きや支払い業務などを任せる契約です。
任意後見契約と違い、契約を結んだ直後から効力が発生します。
活用シーン
- 高齢で外出が難しい
- 入退院が多く、手続きが煩雑
- 離れて暮らす家族に代わって手続きを任せたい
メリット
- 今すぐ利用できる(発効条件なし)
- 任意後見とセットにするとスムーズに移行できる
- 日常的な支払い・口座管理などを安全に依頼できる
注意点
- 法的拘束力は弱いため、信頼できる相手を選ぶ必要あり
- 契約内容を明文化しておかないとトラブルの原因になる
💡 おすすめ組み合わせ
「財産管理委任契約」で現在の支援を始め、
「任意後見契約」で将来の判断能力低下に備えるのが理想的です。
③ 遺言書の作成 ― 判断力があるうちに“想い”を残す
遺言書は「生前にできる最大のトラブル防止策」

認知症になると、法的に「意思能力がない」と判断される場合があり、
遺言書を作成しても無効扱いになるおそれがあります。
だからこそ、判断力がしっかりしているうちに
「公正証書遺言」を作っておくことが重要です。
公正証書遺言のメリット
- 公証人が関与するため、形式不備の心配なし
- 原本を公証役場で保管(紛失・改ざんの恐れなし)
- 家庭裁判所での検認手続き不要
早めの備えが“家族の安心”につながる
タイミング | できること | 備えておく理由 |
|---|---|---|
判断力が十分なうち | 財産管理委任契約 | すぐに支援を受けられる |
少し不安を感じたら | 任意後見契約 | 将来の管理体制を整える |
体調が安定しているうち | 遺言書作成 | 相続トラブルを未然に防ぐ |
「まだ早い」と思っても、いざという時は突然訪れます。
認知症発症後ではできない手続きが多いため、“今”が最も大切なタイミングです。
よくあるご相談

- 「母が軽度の認知症と診断された。今から間に合う手続きは?」
- 「離れて暮らす親の財産管理をどうしたらいい?」
- 「家族信託とどっちが自分に合っているのか知りたい」
これらのご相談には、法律だけでなく実務の流れを熟知した専門家のサポートが不可欠です。
染谷綜合法務事務所にご相談ください

染谷綜合法務事務所では、
司法書士・行政書士・税理士・不動産の専門家がチーム体制で、
相続・認知症対策・家族信託・遺言などの幅広い案件に対応しています。
- 任意後見契約・財産管理契約の設計と作成
- 遺言書(自筆・公正証書)の起案と公証サポート
- 相続登記・不動産名義変更・遺産分割書の作成まで一括対応
「うちの家族の場合はどれが合っているのか?」
「今のうちに準備しておいた方がいいのは?」
どんな小さな疑問でも、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ:認知症対策は「早めの準備」がすべて
- 認知症になってからでは、契約や遺言は作れない
- 任意後見契約で“将来の管理”を
- 財産管理委任契約で“今の支援”を
- 遺言書で“家族の未来”を守る
備えを早く整えておくことが、本人の安心と家族の信頼を守る最善策です。










































