法定未成年者後見人
未成年者がお亡くなりになった場合、当然にもう一人の親に親権が移るわけではなく、民法第838条1号により、未成年者後見が開始することになります。
この場合、法律では未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人が申し立てることができるのですが、実務上は、親権者のご親族、つまりお父様やお母様、叔父様や叔母様がなることが多いでしょう。
未成年者後見人の指定
未成年後見人は遺言で指定できます。(民法839条・第1項)。
ですので、「もし自分が死んだとしても、あの人(元配偶者)には親権は渡したくない」と考えた場合は、遺言で未成年者後見人の指定しておくことで、「あの人(元配偶者)に親権が渡ること」はひとまず阻止することができます。(下記、遺言の書き方参照)
未成年者後見人は1名と法定されておりますので、もし心許ないのならば後見監督人も遺言で追加指定することができます。(民法848条)
未成年後見人
未成年後見人は、親権者と同一の権利義務を有します。
監護養育、財産管理、契約等の行為を行います。未成年後見人になれるのは1名のみです。
未成年後見監督人
未成年後見監督人は、未成年後見人を管理します。
未成年後見監督人の選任は任意なので、無理に選任する必要はありません。
未成年後見監督人に人数制限はありませんが、未成年後見人になっている人の配偶者や兄弟姉妹等はなることができません。
遺言の書き方
遺言者は、未成年者であるA(平成○○年○月○○日生)の後見人として、次の者を指定する。
住所 ○○市○○区○○町○○丁目○○番○○号
職業 ○○○○
氏名 ○○○○
生年月日 昭和○○年○月○○日生
遺言を書く場合、子の最善の利益を第一に考えるべきは当然です。
もし、感情的な想いから遺言を書きますと、結果的に子の福祉を害することが想定され、子供のためにならないと判断されます。冷静に書きましょう。
また、遺言書で指定された者は拒否することもできるので、確実に引き受けて欲しい場合は、事前にその旨を話して、指定する人の了解を取っておいたほうがいいでしょう。
親権者変更の申立をされた場合
子の親権者である離婚した元妻に先立たれた元配偶者は、裁判所に親権者変更の申立てをすることができます。
その場合は、子にとって誰を監護権者にするのがよいか、家庭裁判所が判断します。
子の監護権者が未成年後見人になるのか、元配偶者になるのかは、家庭裁判所の調停、審判次第になります。
親権者変更の申立を阻止する方法
「未成年後見人を指定する遺言」を作ったとしても、元配偶者の親権者変更の申立てを止めることはできません。
そして、親権者変更の申立を阻止することができる遺言は、効力がありません。
したがって、元配偶者が親権者になることを完全に阻止する遺言書を作成することは、不可能ということになります。
遺言以外に、親権を元配偶者以外にする方法
万一余命宣告を受けるようなことがあったら、お子さんとお兄さんを養子縁組してお兄さんを親権者にしておきましょう。
なお、今すぐは養子縁組しますと、親族に親権が渡ってしまいます。
第八百三十九条(未成年後見人の指定)
1 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。